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お薦め教材の落とし穴

英語を学びたい人から必ずと言っていいほど聞かれる質問は、

「お薦めの教材はありますか?」

誰にでも必ず、これは分かりやすい!と感じた教材があります。
ところが、その感覚というのは、様々な教材を試した結果であることが多く、

最初からこれでやっておけば大丈夫!

という教材はありません。それを証明するように、

勧められた教材をやってみても、全然分からなかった

という経験を頻繁に聞きます。その理由は何でしょうか?

語学を初めてすぐは、右も左も分からない土地での生活と同じです。少しずつ外へ出てみて探索して、徐々に近所の環境に慣れていき、いつのまにかその土地の人になっていく過程ととてもよく似ています。

ある程度その土地の地図が頭に入った人が、ある日

「ご当地レストランガイド」

を手に取り、「ああ、あんなところにこんなレストランがあったのか!」という様々な発見をします。そして、そのガイドの地図と写真を眺めながら、その場所を想像するととても楽しいものです。

いつしか、そのガイドが愛読書のようになります。
この方の経験が、そのガイドの波長に合ったわけです。
だから、このガイドこそが、

ベストのガイド!

と位置づけられることになります。今後この方は、自信満々で様々な人にこのガイドを薦めます。

さて、この方の近くに新しい住人が引っ越してきました。
新しい住人に同じガイドを見せたところで、何の想像も働きませんし、新しい住人にとってはそんなガイドではなく、もっと実質的な情報が必要なのかもしれません。

勧められた本を見てみても、

う?ん、この魅力がよく分からない・・・・

ということになります。

語学の教材も同じです。
初心者のうちは、とにかくインプットを増やすこと。そのためには、良い本も悪い本もありません。ドンドン詰め込んでいきます。そもそも、この本が良い、悪い、という判断もつかないことも多いのです。(とんでもなく難しい書き方をして悦に入っているテキストは問題外です)

最初から一冊丸ごと理解しようとしないことです。
理解できなくて読み捨てた本の山を築いてください。

分からないなりにも一冊ずつ読み終わっていくうちに、蓄積された知識が力になってきます。
その知識があることが根拠となって、ある日、なにげなく書店で手にとった一冊の本が、

おお!これこそ私が求めていた本だ!

ということになるのです。
すると、その本が「決定版!私のお薦め!」となります。

でも、落ち着いて考えてみてください。

出会う時期が違えば、同じ本が読み捨てられた山に入った可能性も高いのです。

分からないなりにも読んだ良書悪書の膨大な蓄積があれば、どんな教材からでも吸収できることがあります。一方で、そのベースがない初心者には、何が何だか分からないということになります。

別の言い方をすれば、人に勧めたくなる本に出会うようになったら、“挫折レベル”の突破を意味します。

語学の始まりは、目隠しをして新しい土地で生活するのに似ています。
その目隠しを取りさるのは、とにかく多くの情報を詰め込んでいくこと。
詰め込んだ後で取捨選択をして、知識の体系を整えていけば良いのです。

全ての初心者共通の良書があるとすれば、やはり

NHK ラジオ講座

に道を譲ることになりそうです。